ライラとの出会い 2

6月26日  続き

話掛けてきたポリスマンは真っ黒い顔から細い目で笑ってる「大木こだま」みたいな男だった。海瀬はとりあえず無視し通り過ぎた。
「こんなオッサンと異国の地で談笑してる場合やない。ウェンデルに状況説明せんと。」
ウェンデルは空港のターミナル1、海瀬はターミナル2にいた。うまく説明できるか?焦った。
ふとシマキに助けを求めようかと電話しようと考えたが、早速助けを求めると「ホレ、見たことか」と思われるのも癪だし、一度電話を切らなければシマキに電話出来ない。
振り返るとさっきのポリスマンは同僚と談笑してる。
「エクスキューズミー。」
海瀬はそれだけ言うと携帯を黙ってポリスマンの目の前に差し出し
「マイフレンド、ヒアー」
と言ってここに来るようにと地面を指差した。ポリスマンは理解したのかタガログでウェンデルと話し出した。電話が終わると
「アナタの友達、15ミニッツ」
と言って親切に椅子を差し出して座れと言ってくれた。どうやらここまで来るように行ってくれたらしい。素直に座る海瀬に
「アナタ、名前は?……オオ、マミさんですか!」
スーツケースに貼ってある名前を見て勝手に納得していた。
「アホか、これは連れの嫁さんのスーツケースや。」
と言いたかったが待ち過ぎての疲労感から説明するのが面倒臭かったので黙って頷いた。何か色々と話しをしているがどうでもいい。さっきの談笑していた同僚まで手招きで呼び、一人で嬉しそうに話している。

「まだかな…」
辺りを見ると海瀬が到着したときからずっと待ってる丸眼鏡の長髪を後頭部でくくった40くらいの日本人がいた。海瀬と同じくずっと誰かを待ってる。ポリスマンが椅子に座れと勧めてもいらないとジェスチャーをするだけ。
「せっかくやから座ればええのに。変わったオッサンやな」
そう思ってるとオッサンは椅子に腰掛けた海瀬を時々見ている。
「やっぱり座りたいんやな、あの人。無理せんでもええのにな。」
思ってるとウェンデルからターミナル2に到着したと電話が。またポリスマンに渡しで何処にいるかを説明してもらう。その後ウェンデルとはどんな人物なのか?と尋ねてきたので海瀬はバクラだと答えた。

ポリスマンがウェンデルを迎えに行く。一般人は中には入れないが特別に中まで連れて来てくれるらしい。迎えに行くポリスマンを目で追ってると同僚の男が
「キモチ、センエンダケ」
と海瀬に言った。金を要求してきた。
「カレニ、ワタス。カレハ、ヨロコブ」
棒読みの日本語で続けざまに言う。
海瀬はこの二人のポリスマンがコンビとしてこうやって日本人から親切の見返りに金を要求するんだと理解した。
財布から千円取り出してウェンデルを連れてきたポリスマンにふて腐れた顔で渡した。
細目を見開いたように驚きポリスマンは握手を求めた。
「アナタ、私の友達。アリガトね。」
ウェンデルが後ろから海瀬の腕を強く引いた。早くこの場から出た方がいいらしい。
黙って場を去る二人にポリスマンは
「ありがとね~。マミさ~ん!」と言っていた。
そして海瀬は待ちぼうけのオッサンと目が合った。が、海瀬は「いい勉強になったよ」と視線で合図するとオッサンは目を反らしずっと誰かを待っていた。

海瀬はクーポンタクシーの売り場付近でウェンデルと久しぶりの握手を交わしタクシーに乗り込んだ。

続く

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