誰も振り返らない夜 4

どうも、フィリピンでは向かいの半島の人にやたら間違えられたbaliwです。

 

別にええんやけどね。

間違えた人に理由聞いて「何となく」って何よ。

 

それだけ今現地では日本人が少ないって事なんでしょうかね。

 

確かにアンへレスではやたらコリアンとチャイニーズが大盤振舞して手裏剣のように札を撒き散らしてたのが印象だったなぁ。

 

 

栄枯盛衰なのにね。

 


 

ルームキーを挿すまでの暗い部屋は加えてエアコンも作動しておらずに湿気を帯びている。

ここくらいは、と、スマートにルームキーを挿し灯りと冷気を取り入れる。

 

「どうぞ、入って」

 

もっと中に入れとシェリルを促す。

彼女は何度男にこうやって促されたのか。

 

 

今回の旅はマニラより部屋が安かったので調子こいて一人で寝るのにダブルサイズのツインベッドの部屋を個々に予約した。

なぜか僕だけ禁煙の部屋だったので、緊張を煙草でごまかす事も、情事の後の一服も決め込む事は出来ない仕様になっている。

 

ツインのベッドを見てシェリルが喜ぶ。

 

「baliwはこっちで、ワタシはこっち!」

 

サンダルを脱いで左のベッドに彼女が寝転ぶ。

昨日、英語すらまともに話せない少女を抱いた方のベッド。

 

「おうふ」

 

アンへレスまで来て変な日本語が出た。

さすがに「そりゃないぜ」という気持ちになった。生殺しだ。

 

ただそこで勢いで彼女の許に飛び込んだら良かったんだろうけどそれが出来ない。

冷蔵庫に昼間に用意したミネラルウォーターを二本取り出す。

 

 

喉が渇いた。緊張で口の中が張り付く。

一本の半分まで飲みテレビの前に置く。

知らないOPMが流れている。

 

 

もう一本をくつろぎ始めた彼女に差し出す。

 

安堵の笑顔で受け取る彼女が右手を差し出した。

 

 

ボトルというよりも僕の手首を掴んで引き寄せた。

ベッドにわざとらしく飛び込む僕にシェリルは笑っていた。

 

もう近い。

目が合うと自然にキスをした。

口角が上がるように笑っているシェリル。

 

「ホント、可愛いね」

 

フィリピーナにホントの事を話す時は日本語で話す、昔からの僕の流儀。

 

「ありがと」

 

笑いながら日本語で返された事に虚を突かれた僕。

 

「Ex-Boyfriend,Japanese」

 

だろうね、そうだろうね。

やっぱりそうだろうよ。

 

 

どの日本人も君を放っておく訳が無いよね。

 

 

苛立ちも無く、ただ合点がいったのでしばらく彼女の昔話に付き合う事にした。

何人かの日本人を相手にしただの、ゴールデンウィーク中は日本人が大挙して店に来るもんだから指名が一杯入っただの。

 

彼女の中にセンチメンタルに昔の男を話すという習慣は無いらしい。

ロマンチックな夜が壊されたくはない。しかももう朝だ。

20年後に聞いてやるよ。

 

 

彼女の髪をかき上げ話している口を閉じるかのように長いキスをした。

 

 

もごもごとまだ話足りないのか、決して男女の交わす口付けでは無いななんて思いながら大人しくなるのを待つ。

すぐに大人しく彼女は唇を重ね返して来た。

 

が、すぐに僕の上唇を思いきり吸いついて離れない。

もがく僕、吸いつく彼女。

笑いながら吸いつく彼女に、もがけども抵抗はしなかった。

好きなだけ吸えばいい。

 

「あ~、アナタ煙草臭いわね」

「Sorry po.シャワーしなよ。その間に準備するから」

 

ベッドから見えるガラス張りのシャワー室を指す。

 

「こんな狭いトコに二人で入るのぉ。」

「いやいや、大事なトコも洗いたいからさアナタだけ先に入りなよ」

 

そう言われるのを待ってたんだろう、脇のアームソファに脱いだキャミソールとデニムパンツを掛けた。

成熟していない体に赤い上下の下着が不釣り合いだった。

 

「のぞかないでね。一緒に入るならイイけど」

 

シャワーの音が聞こえ始めた。

 

 

(つづく)

この後のエロ描写はいるのか。
それはクリック次第かも知れんね。

トキ兄いつもありがとうございます。


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