ライラとの出会い 3

6月26日  続き

空港からタクシーに乗り、初めて見るマニラの街並みはごちゃごちゃして喧騒と活気に溢れてる。交通量も多い片側三車線の道路から見るフィリピンは海瀬自身が本当に異国の地で一人でいる事を実感させる。路傍に転がるゴミも歩く人も見える建物もすべて日本とは違う。
エアコンが効かない名ばかりのエアコンタクシー。言葉が解らないから文句の言い様も無い。
「海瀬、今からどこいく?」
「あーっ、今からマカティのトラベルエージェンシーに行って明日のチケット取りに行くよ。ウェンデルは?」
いつもジョセルと話すときに出来るだけ解り易い日本語で喋ろうとするからいつも会話の最初は「あーっ」とか「えーっ」とかが出てしまうのが海瀬の癖で違うフィリピーナからもっと早く話すようにと注意を受けたことがある。
「アコは海瀬とホテル行ってからダンスのレッスンあるから。ホテル戻るは9時かな?」
ずっと興味深くマニラの街並みを見る。派手にデコレーションされたジプニーにキチキチに人が詰まってる。信号待ちでは物売りが豆やおもちゃを売りに来る。通り沿いに立てられたバラックから洗濯物が干してある。
「これがフィリピン。ジョセルが生まれた国。ジョセルが住んでる国。」
そう思うとジョセルに会いたい気持ちがこみ上げてくる。明日にホントに会えるのかという渡比前の不安はマニラのごちゃごちゃに揉み消されていた。

ロハス行きのチケットも受け取りロハス大通り沿いのネットワールドホテルに着いた。ウェンデルはレッスンに行った。まだ3時だ。6時間くらい時間がある。
とりあえず無事にホテルに着いたことをシマキに電話した。
「海瀬君、帰る時にマニラで会おう。話があるんだ。」
何やろ?気にはなった。
ホテルから見える街並み。遠くの高層ビル群、眼下のスラムでバスケットをする人達。
「外に出たいな」
海瀬はそう思ったがホテルに帰ってこれる自信が無かったからホテルのインフォメーションガイドを目にして時間をつぶす。ガイドは日本語で書かれていて日本人スタッフも常駐してる。日本でいうところのフィリピンパブであるカラオケバーも併設してあるが少し気が引けた。どうしようか?そう思う内に眠りについた。

気が付けば9時をまわった。まだウェンデルは帰って来ない。電話すると
「あと1時間で帰るするよ。」
との事。あと2時間は帰ってこないなと海瀬は思った。
11時、予想通りにウェンデルが戻ってきた。両替も空港で5千円しかしてないから手持ちのペソが無い。
タクシーで両替商の多い地区に移動した。夜のマニラは原色のネオンが熱気でゆらゆらと輝いている様で独特の雰囲気を醸し出していた。
「ここの場所はどこなの?」
「エルミタ」
そうか、ここがエルミタか。ガイドブックに有ったけど実際現地に行かないと解らないな。
両替が終わり歩いて近くの中華ファーストフード「シャオキン」で夜食を摂る。言葉が解らないからウェンデルと同じものを食べる。フィリピンの米はあまり旨くないな。その上コーラで食べるのは難しい。海瀬が思ってると
「今からどこ行きたい?案内する」
ウェンデルが言った。
「ほんならマニラのフィリピンパブに行きたいな。安いの?」
「オオ、安いよ。シンパイナイ」
シャオキンを出るとウェンデルは歩き出し始めたがとても早足だ。もう12時を回ってる。正直、海瀬は夜のマニラに興味は有ったがその反面治安の面で怖がっていた。だがバクラのウェンデルにそれを話すことは出来ない。早足で歩くウェンデルにはぐれまいとついて行く。
ガリガリに痩せた猫。一家5人で寝てるホームレス。片足首が無い若いホームレス。いろいろなものを早足の中で目にする。これがフィリピンなんだ。ジョセルが生まれた国。
3分も歩いたくらいでウェンデルが足を止めた。
「ここ!前にオーナーがフィリピン来た時にここ来たよ」
着いたのはマビニ通りにある「ミサキ&タク カラオケバー」。
二人タレントが店頭に立っていた。
中に通されるととても綺麗な内装だ。タレントも15人くらい居る。しばらくするとママらしきフィリピーナが日本語で海瀬にシステムを説明した。安い。日本の比じゃない。
「オーディションしたい?」
ウェンデルが言う。
「頼むよ」
海瀬は伝えるとウェンデルがママと何かを話していた。すぐに二人が座るボックス席の前に5人のフィリピーナが並ぼうとしていた。並びきる前に一番背の高い褐色の肌に黒い服を着たフィリピーナに目が行った。
「どうぞ」
とママに言われると直ぐに
「YOU!」
と言って目に付いていた女性を指差した。一秒もかからずに、他のフィリピーナをも見ずに海瀬は指名をした。
その女性は海瀬の左隣に座って挨拶をした。
「はじめまして。ライラです。」
ジョセル以上に綺麗な日本語で話す女性。海瀬が初めてライラと出会った瞬間だった。

続く

コメント

  1. はじめまして。カチンと申します。以前から、時々blogを拝見させていただいてました。私もこのブログ内にある“ミサキ&タク カラオケバー”にちょうど2週間前に行ってきました。2回目だったんですが、初めて行ったのは今年の1月の初めでした。父親のアサワがフィリピーナで、同じプロダクションのバクラの友達が働いているからというキカッケでした。お店の名前につい反応してコメントさせていただきました。

  2. カチンさん、こんばんは。はじめまして。
    コメント頂きありがとうございます。
    びっくりしました。ブログ読まれてる方で“ミサキ~”に行かれた方がいたとは。
    僕もミサキには渡比の度に遊びに行ってます。カチンさんの知ってるバクラが誰なのかすごく気になります。
    一月には僕も三週間フィリピンに滞在してました。ミサキの横のお店でコーヒー飲みながら仕事終わるのを待ってたものでした。
    カチンさんのブログにも遊びに行かせていただきますね。
    今は携帯からの投稿なのでPCの時にお邪魔しますね。

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